南郷アートプロジェクト2020|見つけに行こう、まだ知らない南郷を。

プロジェクト
ダンス公演「DANCE×JAZZ Episode.0-ジャズの里 南郷」
prologue
プロローグ

ジャズの里のものがたり 02

旧南郷村の村おこしとして、「南郷サマージャズフェスティバル(ジャズフェス)」が始まったのは、今から約30年前の1990年のことです。ジャズ好きの村長の一声から、村民一人一人ができることを積み上げて、「南郷といえばジャズ」と言われるほどになりました。

南郷アートプロジェクトの最終年度となる今回は、南郷ジャズフェスティバルに関わった方にお話を伺い、そこから受けたインスピレーションを基に作品を創作しました。今回、聞かせていただいた5人の方のお話を、八戸市在住のライター馬場美穂子さんによるスペシャルインタビューとして紹介します。

「ジャズの里 南郷」のものがたりをお楽しみください。

語り手:村松平三(むらまつ へいぞう)
1935(昭和10)年、南郷市野沢(当時の中沢村市野沢)生まれ。1954(昭和29)年中沢村役場に就職。在職中は企画振興課長、総務課長などを務め1997(平成9)年、南郷村役場を定年退職。


土の人・村松さん。ステージという名の土台の上にジャズは流れ続ける

村松平三さんは土の人。1980年代には、今では「青葉湖」として観光名所になっている世増ダム建設計画に関わり、高速道路開通を見届けて、村の不習岳(ならわずだけ)を「八戸市民の森」にするため用地交渉に走り回り、南郷サマージャズフェスティバルの会場であるカッコーの森エコーランドに関わった。

 カッコーの森を整備するとき、県費を使わせてもうため青森県の担当者と交渉した。「こんなことしたって活性化にはならないだろう」と言われた。

特に、村松さんが九州視察で感動した野外ステージについては酷評された。

 ステージを造ることはできたが、「何に使うか」は相変わらず問題だった。そんな時、村長が交代する。平成元年5月に村長となったのが、壬生末吉さんだった。8月にこけら落としでハンガリー青年民族舞踊団(ティサ)を呼んだものの、大きな壁に突き当たっていた。

 そんな時、壬生村長が「ジャズで村おこしをやる」と宣言した。といっても、役場職員はみんなジャズが何なのか知らないし、ツテもノウハウもない。気づけば一年が過ぎようとしていた。

そこで耳にしたのが、北海道公演を終えた早稲田と慶應のマンドリンクラブのメンバーが八戸で公演をするという話。見に行っても不安が残ったが、とにかくコンサートを開かなくてはならない。それでも、マンドリンクラブにプロのバンドを加えたら行けるのではないかと、希望を胸に一歩踏み出した。

 平成2年10月11日、村の体育館で「第1回オータムジャズフェスティバルin南郷’90」を開催。消防団の全国大会で横浜に赴いていた村松さんは、旅先から電話をかけて客入りを確かめた。

「1,600人。体育館が満員です」

これを聞いて、いける、と思った。1,600人といえば体育館がはちきれそうな人数だ。体育館の整備も担当したのだから分かる。(後に正式に公表されたところによると来場者数は1,100人だったが)

 若き日、壬生村長や仲間とバンドを組んでいた頃が思い出された。終戦直後の昭和20年代、市野沢青年団の仲間とタンゴバンド「楽団ニューヤング」を結成した。物資不足のなか、古いドラムセットを取り寄せ、テナーサックスは中古、ギター2人にアコーディオン。役場の仕事を終えると集落の校長先生のもとに通い、楽譜の読み方を習った。そういえば、子どもの頃ハーモニカが好きでよく吹いていた。

 ステージを使って活性化のために人が集まることをしたかったけど、うまく使うのは至難の業という気がしていた。ジャズで活性化なんて半信半疑だった。でもきっと大丈夫という気がした。音楽は人を幸せにする。少なくとも人口1万人もいない村で、1,000人を越える人を動かしたんだから。

 勘は当たった。当時、野外ステージは全国各地で造られたけど、今でもきちんと使われているところは少ない。カッコーの森のステージは、その数少ない一つだ。

 「こんなの作っても無駄だ」と責められた県の、その東京事務所から「ポスターが欲しい」と言われたときは、報われた気がした。今や青森県が誇るフェスだと、認められた気がして。

 

書き手:ばばみほこ(ライター、ばばことば事務所)
青森県八戸市出身、在住。タウン情報誌編集を経て2007年、ブランドショップ販売員、環境教育講師などをしながら執筆活動開始。2011年、八戸ポータルミュージアム はっち開館企画「八戸レビュウ」参加をきっかけにフリーライターを名乗る。おもに青森県~岩手県北の人・企業・歴史を取材し各種媒体に執筆するほか、地域のアートプロジェクトに参加するなどフリーダムに活動中。三姉妹の末っ子にして三姉妹の母、重度のおばあちゃん子。

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