南郷アートプロジェクト2019|見つけに行こう、まだ知らない南郷を。

プロジェクト01
島守ダンス映画製作プロジェクト
prologue
プロローグ

虫追い祭り

6月のある日曜日。軽やかな笛と太鼓の音が、青々とした田んぼに響き渡る。上門前、下門前、高山の3つの地区からなる第6区で「虫追いまつり」が行われている。
虫追いまつりは、稲作に害を及ぼす虫を追い払う「虫送り行事」である。虫送り行事は地域によって様々な形をとりながら全国的に行われているものの、すでにやめてしまったところも多い。戦前は島守地域のほとんどで行われていたこの行事も、戦争以降長らく途絶えてしまい、島守で唯一残っているのが、平成に入り虫追い祭りを復活させた第6地区の虫追いまつりだ。
人々は、お囃子の音にあわせ、龍と「悪虫退散五穀豊穣」と書かれた旗を手に、田んぼのあぜ道を練り歩く。大人の持つ大きな龍と、子供たち持つ小さな龍は、時には煙を吐きながら、それぞれ上下左右にうねる。
龍の吐く煙に思わず目を閉じると、龍のような荒々しさを持ちながらも虫のような動きをする奇妙な「人ならぬ者」が現れてくる。龍なのか、虫なのか、それともかつてこの地で暮らした人たちの化身なのか。何者かは分からないが、迷いなく進む「それ」に率いられ、 カゴを担いだ白い顔の男たちと、淡々と旗を担ぐ子供達が続いていく。
虫追いまつりのドキュメンタリーとそこに紛れる白昼夢のようなシーン。地域の人々によって営まれ、どこか軽快な印象もある虫追い祭りと対照的に、奇妙な行列は人ならざる者たちによって厳かに進んでいく。それら2つは違うようでいながらも、ただ一心に進む姿に、どこかつながりを感じずにはいられない。